『おとめマリアのロザリオ』前教皇ヨハネ・パウロ2世の使徒的書簡


教皇ヨハネ・パウロ二世使徒的書簡
『おとめマリアのロザリオ』(ROSARIUM VIRGINIS MARIAE)第三章より 2

27 ロザリオは有効な方法です
 わたしたちがキリストとかかわりを持つために、何らかの方法を用いることがありうるということは、べつだん驚くべきことではありません。なぜなら神は、人間の本性と、その生命のリズムを損なわないしかたで、わたしたちにご自身のことをお伝えになるからです。それゆえ、キリスト教霊性の中には、神との言い表しがたい一致のうちに、イメージもことばも動作もほとんどすべて失ってしまうような、神秘的な沈黙という最高の形をとる場合もよく見られます。しかし、心・身体・人間関係をめぐるすべての複雑な現実の中で、全人格を用いて実践される霊性のほうが普通なのです。
 このことは典礼の中ではっきりと示されます。秘跡や準秘跡を構成する多くの儀式においては、人間の全側面が用いられています。同じことは典礼に属さない祈りについてもいうことができます。このことを裏づける次の事実があります。すなわち、東方において行われている、キリストへの黙想を最大の特徴とする祈りは、「神の子、主イエス・キリスト、罪びとであるわたしをあわれんでください」ということばを中心としていますが、この祈りは伝統的に呼吸のリズムに合わせて唱えられるのです。この唱え方は、たえず祈るのに役立つだけではありません。それは、ある意味で、キリストが息、魂、自分の生活の「すべて」となってくださるようにという願いを、身体をもって表すことになるのです。

'90・1・18